Team Eurasia-iRC TIRE

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パイオニア ペダリングモニター

トレーニング理論や栄養学はどれだけ重要か否かの問題よりも流行に左右されている事が多いように思います。

その時々の強い選手のやり方だったり、新しい機材なんかが出ると、皆「ダー」っとそっちの方向に向かい、今までのやり方に対する関心を失ってしまう選手やコーチは多いと思います。

実は僕もそんな一人で、パイオニアのペダリングモニターのフォースベクトルの解析なんてここ5年以上見ていませんでした。

90年代には既に修善寺の競輪学校には踏んでいる方向と力の大きさ、ペダルの角度を可視化するシステムがあって、それを知ってからは毎年冬には体力測定も兼ねてチェックに行っていました。

そして、自分自身で踏み方、使う筋肉、踏み込む方向など試行錯誤していました。


それから20年…パイオニアが発表した初代ペダリングモニター SGM-PM900 はまさに「あの研究室でしか出来なかった事が、いつでもどこでも自分のバイクでできる!」事は衝撃的でした。

すぐに飛びつき、当初は選手達の様々なデータを取り、自分なりのペダリング理論などを説明し、役立てていたのですがここ数年はざっくりとデータを見直す事はあっても、「コーチ」としては全く利用していませんでした。

ベルギーにいるジュニア1年目の選手との会話の中で「引き足って何?」と言う選手がいて、その選手は乗車中のフォームがキレイだったこともあり、好奇心からちょっと見てみる事にしました。

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上記、約20分のTT走のペダリンググラフ と ペダリングモニターの平均値。ペダリンググラフで90~120度までがフラットになっているのは、骨盤を軸にハムストリングと
大殿筋を使って膝を後ろに掻いているペダリングになっているからだと思う。
これが、膝を軸に前に蹴り出す(大腿四頭筋)を使ったペダリングだと法線+方向への値が高くなる。

30~90度までできちんと踏めていないのも、四頭筋を使って蹴り出すペダリングが出来ていないからだと思います。

 

それよりもやはり引き足が酷い。引き足を意識し過ぎて更に悪化させている選手よりは良いけれど、ペダルの上に足が乗せたままなのだと思う。

 

 


取り合えず一度にあれこれやると混乱するので、引き足を重点的に指導した。

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理屈とやり方を説明した後の値が上図。これはまだフォームを固めるためのトレーニングでケイデンスを低めにして出力は「ソコソコ踏んでいる強度」。まだフォームが固まっていないので右足、左足バラバラだけど、引き足に関してはロスがずいぶんと減っている。

ペダリングモニター見ながら約10分 「引き足のやり方」を理解し、その後は1分のフォーミング(200W前後 60回転)、4分リカバリ、を6セット行った。

特に初めて行うフォーミングはいつもと違う筋肉を使うし、徐々に行うほうがベターです。

で、頭と身体に「動き」を記憶させて、次は7分 320Wの全力TT。フォーミングよりもきっちりとメニューを行う事(出力の達成)を優先にした。
本当は20分のTTが平均306Wなので、さらなるタイムの向上を狙う為に320W 10分 + 100W 10分リカバリーのインターバルを2セット行う予定でしたが、1本目の7分で力尽きました。下図がその7分の平均値データ。

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1番目の図と比較して、240度前後の法線方向の力が100Nから50Nに減り、また270~300度において接線方向のネガティフな力が-50前後から-20前後に減っています。
1番目の図は平均306Wで、3番目の図は平均322Wですから、より大きな力で踏んでいても、引き足が改善(余計な方向への力が減っている)しているのが分かります。

あとは時間をかけてフォーミングを行っていけば、より速いケイデンス、より高い出力でもきちんと正しいペダリングのベクトルを習得できると思います。

こういうのって、本来流行とかじゃなくて、「定番」でやっていかなくてはならない事の一つだと思うと、5年間向き合っていなかったことに反省しています。
実際に、こうやって向上を可視化できると選手のモティベーションにもなると思います。

流行と言えば心拍計もそうですね。最近の選手は心拍計を使っていない選手が多いですが、絶対に使ったほうが良いです。
全開でTTを2回行い、両方とも同タイム…「20分 310W」で走り切ったとしても、ある時は平均心拍数が170bpm、ある時は180bpmだとしたら、「なぜか?」の理由がいくつか考えられ、その理由によってその後のトレーニング計画が変わってくるはずです。

長くなるので…この辺はまた今度…

あらためてパイオニア スゲーと思うと共に、開発された方々の情熱を想い、恩返しができるよう、今後はもっと活用して「選手を強くしたい!」と思います。